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妹尾自身による「HOME WAY」全曲解説
【HOME WAY / Self Liner-Notes】
Cinema Paradiso -Love Theme
メリケンパーク・ノベレッティ
夜想
HOME WAY
and then
7/7
赤とんぼ
Nostalgia.
材木座海岸
いちばん星
今日が終わる前に
- Cinema Paradiso ーLove Theme -
この映画は僕の今までの人生でベスト5に入る名作。 ただテ−マ曲も今やスタンダードになってしまったので、 この曲をアルバムに入れるかどうか随分迷った。 作曲したのは映画音楽界の巨匠エンニオ・モリコーネさんだ。
こういう知れたカバーものってちゃんと自分の語法をもって 挑まないとヌルい(DJバリK〜んの口癖より拝借)と思われがちで、 よくあるただのインスト系に見られる危険もあったからね。 この曲は贅沢に二ケ所のスタジオでテイクを録らせてもらった。 最初に録ったピアノは一見さんお断りみたいなヤツで(笑) こちらを無言で値踏みしてるような骨董品屋のオヤジみたいで でもこれがちゃんと弾いてやると凄い深みのある音がしてジーンときた。
楽器にもね、そういうオーラみたいなのがあるの、おいら霊感はないけど(笑) 目の前に座って、恐れ多くも弾かせていただきますみたいな緊張感。
次に録ったピアノは対照的にオールラウンドなエリートくん。 アブラ(脂肪じゃないよ)の乗りはじめた30代前半ってとこか。 必ず期待を裏切らない、実直なタイプだ。 このアルバムの生ピアノはほとんど彼が担当してくれている。
だがこの曲に関しては迷わず三船敏郎ピアノ(勝手に命名)のテイクを 選ばせてもらった。最初の一音の響きで即決。 はじめに書いたヌルいと思われるか否かは、 僕の音を信じてくれる人達の判断にゆだねることにした。 しかもトップバッターだからね、危険な賭けともいうべきか。 でも悔いはないです。 余談だけど大切な友達の結婚式では必ずこれを弾いております。 もちろん永遠にとセットでね(笑)
- メリケンパーク・ノベレッティ -
僕の地元、神戸モノです。
でもこの曲のイメージは僕がまだ学生だった頃の神戸。 まだモザイク(知ってる?)とかああいう建物が 周りになかった頃に戻って詰め襟の自分と向き合って書きました。
僕が敬愛する映画監督の大林宣彦氏(尾道出身)が、 坂道のある風景はノスタルジックで夢見がちになるとおっしゃってましたが、 僕もまさにその一人、暮れかかる街に港の灯りがひとつふたつ・・・ ”生きてゆく”そんなことを考えてた生意気な十代のころが懐かしいであります。
- 夜想 -
これは贅沢というか、いいピアノで録音したものを、 あえてエンジニアの杉本 健クンにお願いして昭和初期の ラヂオ感(笑)を出してもらいました。 僕のじいちゃんが縁側で煙草ふかしてる若かりしころの古い写 真を 見せてもらった時にひらめいたものです。なかなかのナイスガイでした。 絵が上手かったらしいけど僕が生まれたころにはこの世にはいませんでした。
- Home Way -
何年か前に佐世保の友人を訪ねて 長崎本線-佐世保線と鈍行(各停)に乗った。 僕は時間のある時は決まって鈍行で向かうことにしている。 午後の日だまりが車窓越しになんとも心地よくて、 こんなゆったりとしたサビが鼻歌で出てきた。 なんだって四分音符5つだからね(笑) たぶんこの主人公はウチに着いてもその子に電話とかしないんだろうね。 明日またあえるかな?のんびり屋さんである。 でも僕自身、誰かに会えるまでの一人の時間て何だか好きなんだよな。 まあそのときのお互いの状況にもよるけど・・・
途中、三間坂という駅があまりに素敵だったので降りた。 あの有田焼で有名な有田駅の二つ手前の駅。 とてもあどけなく礼儀正しいブラバンの高校生と記念撮影。 彼達は元気でやっているのだろうか?
歌詞を書くことが楽しくなってきた曲でもある。 いろいろアドバイスをしてくれたエンジニアの小林健介に感謝。 でもってその頃、小田急のホームで偶然出くわした天気雨にも感謝。
- and then -
七夕に向かって雲が動き始める、そんな感じ。 静かな前夜祭とでもいっておこう。 夜想もそうだけどインタールードみたいなのは絶対入れたかった。 ジャネット・ジャクソンみたく物語仕立てなの大好きだし。 そこにわざわざタイトル作って一曲分にしちゃう感じね。
そういえば曇って不思議。こないだ友達と箱根行った時、晴れているんだけど 急にスーっと雲が近づいてきてまさに雲に突っ込んだ。 窓を開けて触ってみるんだけど何か掴めそうで何もないの、 これは俺の人生か?なんて思ったりして(笑) ただ霧のなかをくぐり抜けてる感じ。 すぐに視界が明るくなって、ああ雲を通過したんだって。 余談でした。
- 7/7 -
七夕。いろいろお祭りがあるけど僕は動より静のイメージを打ち出した。 僕がこの仕事を本格的に始めるきっかけをいただいた大御所、細野晴臣氏の 影響が感じられる一作か。僕が初めて彼の作品に触れて興味を抱いたのが YMOじゃなく松田聖子さんのガラスの林檎であったことをここで白状しよう。 僕がいうのも何だが細野さんは圧倒的に素敵なメロディーメーカーだ。
この曲の最後が転調でフェードアウトしてるのは”果たしてふたりは無事に出逢うこ とができたのか・・・-完- ”というある意味あえてすっきりしない感じ。ズームア ウトで天の川を映して、エンドロール。あとは御想像に、的な。
- 赤とんぼ -
何から語ろう?(笑)
山田耕筰の美しいメロディーを得て、 今なお多くの人々に愛されている三木露風作詞の童謡「赤とんぼ」。
まずこの曲をカバーさせてもらうにあたって、 相当な勇気と時間が必要だった。 僕がこの国に生まれたこと、存在の意味、今この場所で呼吸していること、 織り成す季節、今まで出逢ったすべての風景、大切な人達、哀しみや喜び、 喧噪と孤独、あらゆる感情がこの旋律に触れるだけでいっぱいになってしまう。 時にこらえきれずそれは涙に変わる。 僕にとって赤とんぼの旋律ははそんな存在だ。 これといってこの曲に特別な想い出があるわけでもない。 ただ途方にくれてしまうのだ。
それは花火をみたときにも似ている。 子供のころはただきれいで楽しいものだった。 それが歳を重ねるごとにそのころと同じ眼で そのときは見えなかったいろんなものを見ている自分がいる。 いや、見えてしまうのだ。 咲いて散った後の灰に美しさや切なさを感じたり、 余韻もそこそこに足早に帰路を急ぐ人達。 さっき近くで、あのときの僕のように首が痛くなる程 嬉しそうに花火を見上げていた子供をみた。 彼の眼に映る花火はきっともっと単純に大きくて綺麗なんだろう、 花火師が魂を宿した華は、そんな人達のいろんな想いを見届けながら夏の夜空に 散ってゆく。人と比べるととても儚い命だけれどそれでいいのだろう。 それが花火というものなのだから。
すまない、僕に夏のことを語らせるととてつもなく長くなってしまうのだよ。 夏の話はまたの機会にゆっくり話そう。
とにかく僕が今30年分の赤とんぼを表現するのは、 僕にとってそれだけ一大事だったということ。 しかもピアノだけで三木露風の詩の世界を 裏切ることなくかつ自分の語法をもって表さないといけない。 ずっとやりたくて躊躇していたからね。
そんな重い腰を上げることになったきっかけは、 帰省したときに父親と休みに出かけた鮎釣りだった。 連れられていった川は偶然にも三木露風の故郷(兵庫県龍野市)からほど近い、 千種川というところだった。しかも秋。 そこにはいつか何処かでみたような懐かしい景色があった。 初めて足を踏み入れた場所なのにとても愛おしく思えた。 ただぼんやり石にねっころがってあまりの心地よさにしばし眠ってしまった。 どれくらい時間がながれたろう、ふと眼をあけるとたくさんのとんぼが 夕焼けバックに飛んでいるではないか!僕は言葉に出来ず、 ただ頭をよぎった僕なりの赤とんぼを必死で追って記憶した。 こんな偶然を東京に持ち帰って一気に書き上げたのが この妹尾の赤とんぼというわけ。
お陰でレコーディングは以外にも楽にはかどった。 僕はあまりに重大に考え過ぎていたのかも知れない。 感情移入しすぎるとそれが逆効果になってしまうことは 多々ある。むしろ、限りなく無に近い穏やかな状態で奏でられたことが 今の僕の等身大の赤とんぼにつながったのだろう。 ”赤とんぼ”は僕だけのものではないのだから。
ひょんなことから生まれたこの赤とんぼは今となっては 自分にとってかなりの自信作だと思っている。 こんな僕なりの赤とんぼをくれたとんぼくんと千種川と父親に感謝です。 そしてこんな美しい赤とんぼを聴いたことがないと嬉しい言葉を贈ってくれた 村上てつやくん、ほんとうにありがとう。
それからもう一つ。 僕が愛して止まないピアニスト、ビル・エヴァンスさん、 若くして逝ってしまった彼がソロで弾いているダニーボーイはすごいです。 CDも出てるので絶対圧倒的マスト買いアイテムです。 癒しとかそういう次元を超えて、 気がつけば気持ちの良い涙があふれていることでしょう。 僕の赤とんぼとどういう関係があるのかって? 聴けばきっとわかります。
長くなってしまいました、すんません。
- Nostalgia. -
あの恐ろしく悼ましい阪神大震災で逝ってしまった 僕の大親友へ捧げた曲です。
ここに僕が書いた
短編
があります。
私的なことだしこの事をここに書くかどうか迷いましたが、 自分自身の大切な軌跡でもあるので。
- 材木座海岸 -
湘南なのにどっかさびれた感じの海岸。
地元の人が犬の散歩に来るような感じで僕の好きな海岸の一つ。 何といっても名前がいい。鎌倉にはこのほかにも素敵な地名が多いです。よくひとりでのんびり散策してます。この曲は夏の終わりに五線紙など片手に格好つけて書いてた(笑) その割にはわかりやすい曲やね。ちなみにこのアルバムのブックレットのなかにある写 真は まさにその材木座海岸です。僕の心の友、池田武史クンが撮影してくれました。 このホームページにも多大な貢献をしてくれてます。 彼が撮影した植物の写 真はとてもあったかくきれいです。
- いちばん星 -
屋根にのぼったことある?(笑)
これは高校ん時に書いたものをまとめたもの。
最初は2番までしかなかったんだけどもう2番足して コーラスもつけてあげて詰め襟の自分に落とし前つけた。完成したぞと。 思えばこの時分から旅好きだったな。 なんか自分のなかのみんなのうたみたいなのが作りたくて、 歌詞もゆったりとした普遍的なものにしました。 列車のホームとかに吹く風ってね、なんかいいんだよな。
- 今日が終わる前に -
そして最後を飾るのは僕にとってとても大切な一曲。
我らがゴスペラーズ、そう北山陽一クンの書いた名曲であります。 彼の初期の作品のなかでも特に優れたコーラスアレンジがなされていて、 結構高度なことをやっているのにそれを感じさせない本当に心地のいいうたです。 酒井クンのリードがまたなんとも素敵なんだな。
このピアノバージョンはもともとGoScoreという楽譜用にアレンジを頼まれたんだけ ど、僕がやるのならひとつのピアノ小品としても成立するようなものにしたかった。 ゴスペラーズの曲をただピアノ用にメロディーとコード付けましたみたいなのは 僕じゃなくても出来るし、何といってもこんなに素敵なメロディーを僕なりの想いで、 胸を張って伝えたかった。ピアノで弾いてもやっぱりいい曲だねと。 彼とは本当に手が震えるようないいキャッチボールが出来たと思う。 ありがとね陽ちゃん、ありがとうゴスペラーズ。
気に入ってくれた人はGoScoreを手に入れて練習して下さいな。
だいじょぶ、成せば成るです。そして好きな人のために弾いてあげましょ。 いいないいなー(笑)
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